雪の狭間に神隠し
ずっと、お前を連れて行きたいと思っていた。 初めてお前を見た、元旦の朝から、ずっと。 がらんがらんと鈴を鳴らして、丁寧に手を合わせて。お前は小さく、『今年は、良い事いっぱい起きますように』って言ったよな。 俺は神殿の中で、お前を見ていた。 長い睫毛とポニーテールの黒髪。寒さで赤くなった鼻先を擦って、お前は『叶うといいな』って笑っていた。 その後お前はおみくじを引いて、大吉が出たって喜んでたんだっけか。そりゃあそうだ。気に入った奴のおみくじなんて、大吉を出すに決まってる。 そうしたらお前は気分を良くして、お守りをひとつ買っていって。 俺は内心ガッツポーズを決めたものだ。 お守りがあれば、彼女の所在が分かる。お守りは傍らに置く事で効果を発揮するから、易々手離す事も無いだろう。 予想は大当たりだった。 お前はお守りを自室に置いて過ごしていた。出かける時も鞄に入れていたし、四六時中側に置いてくれたのだ。 俺は通常よりかなり多めに、彼女の様子を見に行った。 お守りの気配を辿れば、そこにはちゃんとお前がいる。眠っていたり、遊んでいたり、食事をしていたり。些細な日常を一緒に過ごせたような気がして、嬉しかった。 でも次第に、それじゃあ物足りなくなってしまったんだ。 俺を見て欲しかった。 見つめ続けるのは俺ばっかりで、寂しいと思ったんだ。 だから、お前を【呼ぶ】事にした。いわゆる神隠し、というやつだ。 ずっとずっと、側にいてほしいんだ。 お前ならきっと、優しくて綺麗な女神様になれる。 俺と一緒に来てくれないか? 決めるのはお前だ。お前が了承しないなら、いくら俺でも無理矢理連れていく事は許されない。 格好悪いだろうが、許してくれ。 俺の所へ、嫁にきてほしい・・・。 その日、一人の少女が行方不明になった。 所在が分からなくなったその森には、彼女の履いていたブーツが片方だけ、寂しく落ちていたという。 寒い寒い、雪の日の事だった。 彼女の身に何が起こったのか、知るものはいない・・・