騙されて、裏切られて、でも好きで。
『おかけになった電話番号は現在…』 これで5回目。あぁ、騙された。 私は、ツー、ツー、と鳴っているスマホをベッドに放り投げ、机につっぷした。 「俺の母さん、重いガンを患(わずら)ってるんだ。でも家には金が無いから手術代が払えない。どうしよう。」 きっかけは、この言葉からだった。 私は、陸斗(彼氏)の母のガンを、どうしても治してあげたいと思い、陸斗の言葉を信じて、貯金額500万を全額渡した。 そこからだった。 何度もメールを送ったり、電話を掛けたりしたけれど、陸斗が出ることは一度も無かった。 つまり私は、騙されたのだ。 新人だった頃から、必死で働いて貯めてきた大切な500万が、一瞬で、ぷつんと消えた。 私は、陸斗の家の住所を知らない。 陸斗の母の顔や名前、そもそも陸斗に母親なんているのかすら知らない。 あぁ、騙された。私は所詮、財布扱いだったんだ。 あぁ、馬鹿みたいだ。こんなことごときで500万をドブに捨てるなんて。 でも私は、まだ陸斗のことが好きなのだ。 春に付き合い始めて、夏には、二人でプールや祭りに行ったり。秋には、ブドウ狩りにも行った。 陸斗との数々の思い出が、忘れられない。 「…陸斗…」 思わず私は、私を裏切り、私を騙した彼氏の名を呼ぶ。 その直後、一通のメールが届いた。 陸斗からだった。 『ひより、元気?今、無事に手術終わった!成功したよ。母さんも元気!電話とメール、出られなくてごめん。母さんが救急車に運ばれた時に俺も同伴したんだけど、スマホ忘れちゃって。そのまま付きっきりだったから…心配かけたよね。ごめん。明日、会いに行くわ。』 それを読んだあと、私の頬(ほお)に涙がつたった。 ************************* 読んでくれてありがとうございます。 良かったら、感想、アドバイスよろしくお願いします。