ある一匹の犬
僕は暗闇にいた。 何もみえなくて、怖かった。 あれ、上が明るい。 見上げると、笑顔の女の子がいた。 女の子は僕を抱え、一緒に家に帰った。 この子が僕のご主人様。 ご主人様はどこへいくときも僕をつれていった。 僕はとても嬉しかった。 春は桜の舞う道をご主人様と歩いた。 夏はじめじめした中ご主人様と一緒に走った。 秋は落ち葉の中をご主人様とゆっくり歩いた。 冬は冷たい雪の上をご主人様と歩いた。 毎年毎年… 時には喧嘩もした。目もあわせてくれなかった。 でも最後は笑顔で許してくれた。 ご主人様はだんだん身長が伸びていき、見た目も変わった。 僕もどんどん大きくなり、歩きにくくなった。 耳が聞こえにくい。 ご主人様が話しかけてくれたのに気づかず、眠っていた。 目も見にくくなった。 体が…動かない。 あれ、ご主人様、泣いているの? 泣かないで、僕は元気だから。 ご主人様が泣きながら僕を抱き締める。 ご主人様といた時間、楽しかったなぁ。 ご主人様、今までありがとう。 僕はゆっくり目を瞑った。