おかしな癖
「密室?」 「密室ってあの密室ね。外から出入りが出来ない状態のことね。部屋中の鍵という鍵がかかっているとかそういうことだよ」 お巡りさんはわざわざ私に説明した。 「分かってます。それで、犯人は?お父さんを殺した理由は?」 「同僚の医師だ。君のお父さんばかり昇進してムカついたからってよ。ただ、密室のトリックは言わない。分からないってな。嘘に決まってる。トリックに自信があるんだよ」 私はため息をついた。 その医師、妬んで人を殺したなんて。お父さんを刺したなんて。 私はせめて笑った。 「ありがとうございます。部屋の中心で寝ていた時に殺されたお父さん。おかしな癖だったとはいえ、可哀想です」 警官がくれた書類。 死亡推定時刻、死因、動機、目撃証言などがびっしりと書かれた書類。 事件が起きた家の写真があった。 屋根に何か違和感を感じる。 何か閃いた時、お母さんの泣き声が聞こえた。小学五年生の妹、加奈(かな)が慰める声が聞こえてくる。 頭から外界を切り離し、私は考えてみた。 現場の部屋は最上階、密室で窓には格子が設けられ、窓とドアには鍵がかかっていた。 私は屋根の写真をじっと見つめた。 なんか……光が差し込んでいる気がする。 目を凝らして凝視する。 屋根に縦長の穴が空いていた。 デジカメで写真を撮る。 精度が高くなったが、見間違いではなかった。 穴はあった。 「月香(つきか)、どうしたの?」 「お姉ちゃん?」 二人の声を背中で受け止め、私は書類を持って家から走り出した。 密室はお父さんが自ら作り出した。おそらく、殺される前に。 犯人の医師は屋根に穴を作り、そこから凶器である包丁を落とした。包丁は部屋の中心で寝る癖があったお父さんのお腹に命中。お父さんは死んだ。 なんてことない真相。 つまらないくらい単純な真相。 そんなんでお父さんは死んだ。