私の酸っぱいチョコレート。
二月十四日。バレンタインデー。私の通学カバンには袋入りのチョコレート。今日こそは、想い寄せた湯浅君にこれを渡す! 話は一週間前に遡る。シライさんという不登校だった子がついに学校にきた。一、二学期は一日も来ていなかったが、それでみんなが心配している素振りも見せず、彼女は一人ぼっちで生活した。 シライさんは、バレンタインデーに興味あるんだろうか。ふとそんなことを考えた。あの子は無口だ。好きな子がいても、知ることはないと思っていた。 しかし。友達に見送られ湯浅君にチョコを渡そうとした放課後、昇降口で思いもよらぬ光景を目にした。 「好きです」 そこには、湯浅君と、あのシライさん。固まってしまった私に追い討ちをかけるように湯浅君の放った一言。 「うん・・・俺も昔から好きだった」 気がつけば、私の視界に入る二人の姿がぼやけた。私、泣いてる・・・? ポカンとした友達を置いて私は家に逃げるように帰っていった。そして自分の部屋に上がり、チョコレートを袋から出して口の中に入れた。 涙も口に入り込んで、甘いはずのチョコレートは、酸っぱかった。 あれから七年経つが、バレンタインデーが訪れると毎年思い出す話だ・・・