黒色のパレット
「あー。最悪!」 私は筆がさばさばになるまで下手くそな絵を塗りつぶす。 「消していいの?別によかったのに」 同じ部の奏磨(そうま)だ。 「うっさいなー。ほっといてよ!」 奏磨のほうが優れているくせに。 だけど、奏磨と一緒になりたくて入った美術部だ。 奏磨を…好きになった。でも恋愛対象にならないよね。こんな私なんかが。 「里美はなんで美術部に入ったの?」 「……。一緒になりたい人がいたから。それだけ」 優しい声に怒りやいらいらが消える。 「…俺も好きなやつと同じが良かったから。」 ふと見たパレットは黒色で埋め尽くされている。まるで私の心みたい。 「好きだ。前からずっと…」 私は嬉しかった。正直。だから真っ黒な絵に「私も」と書いた。 「じ、じゃあ付き合ってくれるか?」 「うん!」 照れ隠しにパレットを洗いに水道へと走った。 みるみるうちに黒が落ちて隠れていたピンクが柔らかく広がっていく。 私の心はパレットそのものだ。