(物語)神様とおんなのこ
私は、神社のお稲荷さん。 私には、小さな小さな女の子の友達がいる。 十歳の、モモという子だ。 毎日、学校が終わったあと、夕日を見ながら、話をする。 私は妖怪だから、モモにしか姿は見えないのさ。 おっと、今日も来たようだ。 「こんにちは、お稲荷さん。今日も、来ましたよ。」 「ここに座るんじゃ。」 「お稲荷さん、今日学校で友達と将来の夢について話したんだ。」 「お主は何になりたいんじゃ。」 「私は神社の巫女さんになりたいよ。ここの神社の巫女さん。 そしたら、お稲荷さんとずっと一緒にいられるから。」 「そうか。お主ならきっとなれるぞ。」 こんな感じで、極々普通の会話をするのさ。 次の日。 「こんにちは、お稲荷さん。今日も、来ましたよ。」 「ここに座るんじゃ。」 「お稲荷さん、昨日の夜から心臓が痛いの。どうしてかな。」 「今日は早く休んだほうがいいぞ。」 「うん。」 次の日。 「…こんにちは。お稲荷さん。」 「お話、聞いてくれますか。」 「私、心臓の病気なんだ。昨日病院に行ったの。病院の先生に言われた。」 「…そうか。」 次の日。 「…こんにちは。」 「お稲荷さん、私。」 「入院することになった。明日から、しばらく来れない…。」 「私はずっと、待っているからな。」 「お稲荷さん、夕日が綺麗だよ。」 「ああ、綺麗だな。」 「私、頑張る。」 「ああ、頑張るんじゃぞ。」 次の日。 その次の日。 一ヶ月。 三ヶ月。 一年。 十年。 私は、彼女を待った。 だが、来なかった。 大体、分かるけど。こういうのは分かるけど。 しばらくっていったじゃないか。しばらくって。 私は、涙を拭きながら、あの夕日を見た。 今日も、夕日は輝いていた。