花富ノ朝羽子の過去封じ伝
花富ノ朝羽子(はなとみのちょうこ)は、江戸で有名な忍び。 …になる前は、宮臼城の姫として暮らしていた。 「お羽様、稽古の時刻でございます。姫だからといって甘くは致しません。厳しく教えさせて頂きます」 朝富羽子。それが本当の名前。五歳の時、家来がそう言った日から、羽子の1日はとてもハードなものになっていた。 「礼はもっと腰を曲げて。髪は垂らさない!」 「歩く時は、せかせかと歩かない!」 「お茶が濁っています。やり直し!」 「裁縫はもっと丁寧に。糸がほつれています。やり直し!」 「言葉使いがなっておりません。私語は今後いかなる場合でも禁止!」 羽子は毎日こんな日々で、うんざりしていた。 縛られた生活をしたくない。そう思い、忍びとして生きる事にしたのだ。 「お、お羽様!!」 ある日、城から羽子が消えていたのを、見張りが見つけた。 羽子が戸から逃げ出したのだ。 「姫として生きるのが嫌にでもなったのか。ふん。今すぐに探せ。」 羽子の父、正廉衛門(まさかどえもん)が言った。しかし、羽子が見つかることはなかった。 その数年ほどたったある日、忍學校を卒業した羽子は、名前を花富ノ朝羽子に変えた。 クナイと手裏剣を持ちながら、大勢の敵を前にして、大きな声を張り上げる。 「目くらましの術!手裏剣かまえ!」 長かった髪を切り、赤い手拭いで結んだ髪は、今日も揺れてゆく。