貴方
波打ち際。ざーっと音を立てて脈打つ海。 さらさらと木の葉が風に揺れている。 ーー。 貴方と二人きりで初めて来た場所。それがこの海だった。夕焼け空のほうずき色に染まった水平線。キラキラと輝く海を隣に、私たちは手を繋いで歩く。不器用な貴方は手を繋ぐのさえもあたふたしてたね。真っ赤に染まった耳。それが何処となく可愛くって。 微笑みながらいつまでも歩いた。些細な幸せは直ぐ近くにあったね。 そんなふうに笑い合った翌年、貴方は空へ。 胸になんだか穴がぽっかり空いた気がした。 3年後。私はあの時来た海にまた訪れていた。 嗚呼。あの時見た景色と全く一緒だ。 自然と頬を大粒の雫が伝う。 もう十分悲しんだはずなのに、止まらない涙。赤子のように顔がぐしゃぐしゃになるまで泣いて、止まったのはいつだろう。覚えて無いや。 きっと、あの胸に空いた気がした穴は貴方がくれた愛の大きさでしょ?だって、泣き終わったあと、心の穴、無くなってたもん。 上から見守っててね。 頼んだよ。