冥
この何処か懐かしい空間はなんだろう。 ずっとずっと前に此処に居た気がする。 居心地が良くて、消えそうで、溶けそうで。 でも、本能が叫んでる。 「此処に来ちゃいけない」 「早く元の場所へ帰るんだ」 帰らなくてはいけない。 絶対に帰らなくてはいけない。 真っ白でふわふわした無重力のような空間を歩き続ける。 ふと、誰かの呼び声が聞こえた気がした。 余計に頭の中の「早く元へ」という声が大きくなる。 必死に脚を動かすが、全く前に進んでいる気がしない。 もう限界だ。 その場にへたりこむと身体が溶け出した。 トロッとした脚の感覚は無くなっている。 つま先がスライムのようになり、滴る。 手もスライムのようになり、滴る。 辛うじて機能する身体に誰かの泣き叫ぶ声が響く。 『うああああああああああ 逝っちゃ嫌ああああああああああ』 その瞬間、私がどうしてこんな所に居るのかが分かった。 まだっ……まだ死ねないよ。 そう呟いた途端に逆再生のように身体が元に戻った。 ゆっくりと立ち上がり、目を瞑る。 そして、走りだす姿勢をとる。 ピストルの音が聞こえたような気がし、私は走った。走った。走った。 脚は地面らしきものに沈み込むが、そんなの知らない。 走って、走って、走り抜けた。 そして何かに顔面からぶち当たった。 そのショックで倒れ、走り出す前に閉じた目を開いた時には、白い天井と蛍光灯が放つ無機質な光が目に入った。 私の予想は正解だったようだ。 無事に此処に戻ってこられて本当に良かった。 あと80年は彼処に用が無くなることを願いたい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー どうも 筆者です 今回の話を考察してくれると凄い嬉しいです
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いいお話ですね
・とても世界感がとても好きです。