思い出
僕、高橋あきらは中学一年より先の記憶は、何一つ覚えていない。どこからやって来たのかも、自分の名前すら覚えていなかった。しかし、覚えているものが一つだけある、それは両親が僕にたくさんの愛情をそそいでくれていたということだけだった。今でも両親の声は心の底から聞こえてくる気がし た。今では高校二年生になった。拾われた当初は、泥だらけで痩せ細っていたと言う。 「おい、一緒に帰ったら遊ぼうぜ」 最初の頃は、心を開かなかった僕だけど、今では友達数人ぐらいできるようにはなった。友達話すこと学校に行くことが日常になった僕だけど、ある日その日常は変わる。先生が変わったのだ。先生が変わったせいで心の歯車がずれて噛み合わなくなる。 そしてとある日先生は僕を呼びだした。先生は大事な話があると言って。 「どこかで私のことを見たことがないかい?」 それはいつもの先生とは違って優しくて心地よい声だった。心にかかったもやもやが吹き飛んだ。先生は僕のお父さんだったのだ。全てのことを思い出す。心も声を張り上げて泣いていいと言っているように感じる。しかし僕は 「見たことは一度もありません。」 寄りかかりたい、しかしその思いをはねかえす。辛いのは自分一人だけで充分だと言い聞かせて。今日あったことは心にしまっておこう。自分の決意ができるまで、そうしなければ心が崩れてしまいそうな気がして。