錯覚
何故だろうか、目を覚ますと私は金縛りにあっていた。 初めてだから解決法とか知らないしよくわからくて困っているが、今日はとりあえずそのまま眠ろうかなと思った。が、金縛りだからなのか瞳を閉じることも出来ず、そのまま目を開けて過ごすしかなかった。 しばらくしてから、私は痛み止めを飲んでいないことに気付いた。一応病気持ちで薬を処方されるほど症状が悪化しているから、飲まなきゃまずい……はずだ。もう治療段階ですらないのだから、結構危険、だと思っていた。 ただ、今日は調子が良いのか全くと言っていいほど痛みが出ない。危うく薬どころか病のことまで忘れそうになる。 そういえばさっきから私の近くで担当医が小難しい話をしている。盗み聞きだから詳しくは分からないが、私と同じ病で苦しむ人の話だということは分かった。ご臨終だのなんだの言っているからもうすぐ寿命が尽きるのであろう。そんなことを考えていると、今自分が生きていられることがより一層奇跡のように感じる。 でも、数分後。 私の左横には涙ぐむ夫と不安そうにする娘がいた。 反対側には母まで。一体何があったのだろうか。今私は至って元気でいつもより健康なはずだが。 だが、それはどうやら単なる私の錯覚だったらしいと、私は耳で察した。だって、医師が家族に向かってこう言ったのだから。 「ご愁傷さまです。」